というのがフリーライダーたちの言い分です。しかし、これを電化すれば、出発時の加速は速くなるし、ドアは自動開閉になるんで、こういう光景はなくなり、並走しているバスよりも運賃が安く、時間が正確で、速いのであれば、彼らは運賃を払わざるを得なくなるし、むしろ喜んで払うでしょう。トランスポート・エコノミストの中井さんにも説明したんですが、公式統計がないということで、あなたが運賃収入予測の原データとしているものに、フリーライダーの乗車は含まれていないはずです。ぼくの推測では、フリーライダーの有料化で、運賃収入は倍近くになるはずです」
土岐は、ゆっくりと遠ざかる列車が次第に小さくなるのを見送りながら、返答する言葉を捜していた。運賃収入が倍近くになるとすれば、収入は八百億円に跳ね上がり、赤字幅は一挙に二百億円に圧縮される。
「このこと、ご存知でしたか?」
と南田が両手をポケットに突っ込み、腰をすこしかがめて、ななめ下から土岐の顔をのぞき込んできた。
「いえ、知りませんでした」
と土岐はため息をつくようにして答えた。
「まあ、財務分析の守備範囲を超える話かも知れませんが、昨夜、王谷さんからあなたにこれを見せるようにと頼まれまして・・・これでプロジェクトの赤字が多少減額されれば、ぼくがあなたにこの情景をみせたということの証拠にもなりますんで、・・・うちの会社も王谷さんにはこのプロジェクトでこれからいろいろとお世話になるんで、よろしく・・・宮仕えはつらいもんです」
とすこしかがみ込んで、土岐の顔をななめ下からなめ上げるようにして言う。
「考慮します」
としか土岐は言いようがなかった。
「運賃収入は2倍でお願いできますかね」
と南田が押しつけるように言ってきた。土岐は、必ずしもそうはならない理由を言うことにした。
「たしかに、フリーライダーはいなくなるでしょうね。そうすると彼らはバスに乗り換えるかもしれないですね。バスと鉄道の運賃設定はだいたい同額になっているんですが、バス停の数の多いだけバスの方が便がいいんじゃないですかね。それに、この国だっていずれモータリゼーションに向かうでしょう。最初はバイク、つぎは自動車、・・・そうなれば、乗客数が2倍になるかどうか・・・多少は増えるとは思いますが・・・」
南田は頬を膨らませて、路上の小石を蹴飛ばしている。土岐はそれ以上言うのをやめた。
土岐は、ゆっくりと遠ざかる列車が次第に小さくなるのを見送りながら、返答する言葉を捜していた。運賃収入が倍近くになるとすれば、収入は八百億円に跳ね上がり、赤字幅は一挙に二百億円に圧縮される。
「このこと、ご存知でしたか?」
と南田が両手をポケットに突っ込み、腰をすこしかがめて、ななめ下から土岐の顔をのぞき込んできた。
「いえ、知りませんでした」
と土岐はため息をつくようにして答えた。
「まあ、財務分析の守備範囲を超える話かも知れませんが、昨夜、王谷さんからあなたにこれを見せるようにと頼まれまして・・・これでプロジェクトの赤字が多少減額されれば、ぼくがあなたにこの情景をみせたということの証拠にもなりますんで、・・・うちの会社も王谷さんにはこのプロジェクトでこれからいろいろとお世話になるんで、よろしく・・・宮仕えはつらいもんです」
とすこしかがみ込んで、土岐の顔をななめ下からなめ上げるようにして言う。
「考慮します」
としか土岐は言いようがなかった。
「運賃収入は2倍でお願いできますかね」
と南田が押しつけるように言ってきた。土岐は、必ずしもそうはならない理由を言うことにした。
「たしかに、フリーライダーはいなくなるでしょうね。そうすると彼らはバスに乗り換えるかもしれないですね。バスと鉄道の運賃設定はだいたい同額になっているんですが、バス停の数の多いだけバスの方が便がいいんじゃないですかね。それに、この国だっていずれモータリゼーションに向かうでしょう。最初はバイク、つぎは自動車、・・・そうなれば、乗客数が2倍になるかどうか・・・多少は増えるとは思いますが・・・」
南田は頬を膨らませて、路上の小石を蹴飛ばしている。土岐はそれ以上言うのをやめた。


