「おたくのところの、専務理事の萩本さん、お元気?」
と不自然なほど胸を張った姿勢で顎を突き出して聞いてきた。
「ええ、・・・うちの専務理事をご存知なんですか?」
「同じゼミなんで、・・・ゼミの同窓会でよく会うんで、・・・随分と優雅な生活をしているようですね」
と言いながら鼻の穴を剥き出しにして大声で笑った。その笑声に、
(おまえの給料は、おれの所属している経済産業省が出しているんだぞ)
という先刻の意趣返しの侮りがこめられているような気がした。そのとき、土岐の現在の職場をなぜ西原が知っているのか聞こうとしたが思いとどまった。おそらく、扶桑総合研究所に提出した土岐の履歴書がACI経由でこの大使館にも流れているのだろうと想像した。しかし、扶桑総合研究所の人間として行動することを求めていた砂田が、土岐の履歴情報をACIに流したとは思えないので、たぶん、鈴村が取締役という立場で土岐に関する情報をACIに提供したものだろうと推察した。
丸山は飲食とともに人々の間を歓談しながらウエイターのように移動していた。土岐の近くに来たとき、彼を質問で捕まえた。
「なんで、シュトゥーバだけなんですか?他の国鉄省の人は最初から呼んでないんですか?」
「総裁と財務部長には声を掛けたらしいんですが、・・・ホテルならともかく、こういうところには、かれらは来ないですね。沽券にかかわると思っているようですね。シュトゥーバは業務命令できたようです。とにかく彼は、総裁と財務部長の信任が厚いんですよ。財務分析も、彼がOKと言えば、いいみたいですよ」
と言ってから、近くに西原のいないことを確認して、急に声をひそめた。
「でも、さっきの発言はまずかったですね。いずれ間違いなく何かがあるから、気をつけた方がいいですよ。公衆の面前というほどではないですが、われわれの目の前で、西原さんの誤りを公然と指摘してしまったんですから・・・あの場で言わなくても、よかったような気がしないでもないですがね。西原さんはわれわれの想像を超えた人なんですよ」
と不自然なほど胸を張った姿勢で顎を突き出して聞いてきた。
「ええ、・・・うちの専務理事をご存知なんですか?」
「同じゼミなんで、・・・ゼミの同窓会でよく会うんで、・・・随分と優雅な生活をしているようですね」
と言いながら鼻の穴を剥き出しにして大声で笑った。その笑声に、
(おまえの給料は、おれの所属している経済産業省が出しているんだぞ)
という先刻の意趣返しの侮りがこめられているような気がした。そのとき、土岐の現在の職場をなぜ西原が知っているのか聞こうとしたが思いとどまった。おそらく、扶桑総合研究所に提出した土岐の履歴書がACI経由でこの大使館にも流れているのだろうと想像した。しかし、扶桑総合研究所の人間として行動することを求めていた砂田が、土岐の履歴情報をACIに流したとは思えないので、たぶん、鈴村が取締役という立場で土岐に関する情報をACIに提供したものだろうと推察した。
丸山は飲食とともに人々の間を歓談しながらウエイターのように移動していた。土岐の近くに来たとき、彼を質問で捕まえた。
「なんで、シュトゥーバだけなんですか?他の国鉄省の人は最初から呼んでないんですか?」
「総裁と財務部長には声を掛けたらしいんですが、・・・ホテルならともかく、こういうところには、かれらは来ないですね。沽券にかかわると思っているようですね。シュトゥーバは業務命令できたようです。とにかく彼は、総裁と財務部長の信任が厚いんですよ。財務分析も、彼がOKと言えば、いいみたいですよ」
と言ってから、近くに西原のいないことを確認して、急に声をひそめた。
「でも、さっきの発言はまずかったですね。いずれ間違いなく何かがあるから、気をつけた方がいいですよ。公衆の面前というほどではないですが、われわれの目の前で、西原さんの誤りを公然と指摘してしまったんですから・・・あの場で言わなくても、よかったような気がしないでもないですがね。西原さんはわれわれの想像を超えた人なんですよ」


