「で、国の名前は社会主義ではあるが、経済的には自由主義であることを想定して、この需要曲線も自由主義を前提として描いてあります」
「自由主義と社会主義で需要曲線が違うのか?」
と王谷が呟くように言う。
西原はちらりと目線を王谷に向けて、小さく小馬鹿にしたような溜息を吐く。
「自由主義の需要曲線は人々の自由な意思を反映して描かれます。電車に乗るのも乗らないのも国民の自由ということです。乗るかのらないかの判断は、提示された運賃に乗客がどう反応するかに委ねられます。これが自由主義です。高くて乗らないのも自由、安いと思っても運賃以上の支払はする必要はない。金持ちに対しても、貧乏人に対しても、同一価格で販売する・・・これが市場経済です。・・・で、試算だと一マイルあたり一円の運賃だと、累計で四百億マイルの需要があるということです。この需要曲線の縦軸の切片を4円とすると、縦軸と需要曲線と補助的に引いた1円の点線の運賃線で囲まれる三角形の面積は消費者余剰になります。運賃が一円に設定されていても、心理的にはもっと払ってもよいと思っている利用者はいるはずで、いろいろな利用者がいるから、より多く支払ってもいいと考える金額はいろいろだが、一円は支払いたくないと思う利用者は乗らないのだから、乗車する利用者は間違いなく一円以上の評価をしていると考えられる。並走しているバス料金を考慮すると、最大限支払ってもよいと思う金額は、4円程度だ。つまり、この三角形の面積に該当する金額を利用者は払ってもいいのだが、たまたま運賃が一円に設定されているからそれ以上は払わない、いわば利用者の儲けのような金額だ。この三角形の面積は高さが四円マイナス一円で三円、底辺が四百億マイルなので、消費者余剰は六百億円になる。つまり、利用者の利益を六百億円とすれば、プロジェクトの現在価値が六百億円の赤字であるとしても、このプロジェクトは採算があっているということになる」
と言いながら西原は三角形の面積を青いボールペンで斜線を何本も引きながら塗り潰して行く。強く塗りつぶして、質のあまり良くない紙がすこし破れた。
「自由主義と社会主義で需要曲線が違うのか?」
と王谷が呟くように言う。
西原はちらりと目線を王谷に向けて、小さく小馬鹿にしたような溜息を吐く。
「自由主義の需要曲線は人々の自由な意思を反映して描かれます。電車に乗るのも乗らないのも国民の自由ということです。乗るかのらないかの判断は、提示された運賃に乗客がどう反応するかに委ねられます。これが自由主義です。高くて乗らないのも自由、安いと思っても運賃以上の支払はする必要はない。金持ちに対しても、貧乏人に対しても、同一価格で販売する・・・これが市場経済です。・・・で、試算だと一マイルあたり一円の運賃だと、累計で四百億マイルの需要があるということです。この需要曲線の縦軸の切片を4円とすると、縦軸と需要曲線と補助的に引いた1円の点線の運賃線で囲まれる三角形の面積は消費者余剰になります。運賃が一円に設定されていても、心理的にはもっと払ってもよいと思っている利用者はいるはずで、いろいろな利用者がいるから、より多く支払ってもいいと考える金額はいろいろだが、一円は支払いたくないと思う利用者は乗らないのだから、乗車する利用者は間違いなく一円以上の評価をしていると考えられる。並走しているバス料金を考慮すると、最大限支払ってもよいと思う金額は、4円程度だ。つまり、この三角形の面積に該当する金額を利用者は払ってもいいのだが、たまたま運賃が一円に設定されているからそれ以上は払わない、いわば利用者の儲けのような金額だ。この三角形の面積は高さが四円マイナス一円で三円、底辺が四百億マイルなので、消費者余剰は六百億円になる。つまり、利用者の利益を六百億円とすれば、プロジェクトの現在価値が六百億円の赤字であるとしても、このプロジェクトは採算があっているということになる」
と言いながら西原は三角形の面積を青いボールペンで斜線を何本も引きながら塗り潰して行く。強く塗りつぶして、質のあまり良くない紙がすこし破れた。


