「とりあえず、プロジェクトを推進するためには、赤字をなんとか圧縮しないと・・・」
と白石が、王谷に命ずるような口調で語りかける。
「まあ、それが財務分析の仕事ですから・・・」
と王谷がタバコに火をつけながら答える。その傍らで、西原がテーブルの上にあった何かの紙の裏に、パーカーのボールペンで縦軸と横軸を描き出した。縦軸に運賃、横軸に累積乗客距離と殴りつけるように書き込んだ。
「土岐さん、プロジェクト期間の累計の乗客輸送距離はどれくらいですか」
と目線をあわさずに、せかせるようにうつむいたままで聞いてきた。先の尖った大きな耳が土岐の顔に向けられていた。
「約四百億マイルです」
と土岐が記憶を辿るように手短に答えると、
「ということは、運賃は一マイルあたり一円ということですか?」
と詰問口調で確認するように西原は顎を突き出して、うろんな表情を土岐に向けた。
「現行の運賃だとそうなります。貨物も含めてということですが・・・」
と説明すると、西原は右下がりのグラフを書き込み、縦軸の切片に4円と記入し、縦軸に1円と記入したところから、横軸に点線で平行線を引き、右下がりのグラフと交わる点から下に点線を下ろし、横軸の目盛りを400億とした。そのグラフを全員に見せながら、西原はいきせききるように説明を始めた。
「この右下がりのグラフはプロジェクト期間累計の電車乗車の需要曲線です。まあ、健全な常識に従って、右下がりということでよろしいですね」
と言いながら一同を見回す。語尾に有無を言わせないような雰囲気がある。
「この国は形式的には社会主義ですが・・・」
と西原が言いかけたとき、王谷が質した。
「形式的には・・・というのはどういう意味?」
「この国の官僚は誰も資本論を読んでいないし、だいたい、社会主義と資本主義の違いも分かっていない」
「じゃあ、なんで、国の名前に社会主義が入っているの?」
と白石が聞く。
「建国の当初は、初代大統領も社会主義のなんたるかは分っていただろうとは思うけど・・・だいたい、社会主義を理想として建国したんではなくて、隣国の社会主義の大国と緊張関係にならないようにという政治的配慮と、その大国から援助を引き出したいという経済的な理由で・・・」
と言いながら、西原は目をグラフに落として、話を戻した。
と白石が、王谷に命ずるような口調で語りかける。
「まあ、それが財務分析の仕事ですから・・・」
と王谷がタバコに火をつけながら答える。その傍らで、西原がテーブルの上にあった何かの紙の裏に、パーカーのボールペンで縦軸と横軸を描き出した。縦軸に運賃、横軸に累積乗客距離と殴りつけるように書き込んだ。
「土岐さん、プロジェクト期間の累計の乗客輸送距離はどれくらいですか」
と目線をあわさずに、せかせるようにうつむいたままで聞いてきた。先の尖った大きな耳が土岐の顔に向けられていた。
「約四百億マイルです」
と土岐が記憶を辿るように手短に答えると、
「ということは、運賃は一マイルあたり一円ということですか?」
と詰問口調で確認するように西原は顎を突き出して、うろんな表情を土岐に向けた。
「現行の運賃だとそうなります。貨物も含めてということですが・・・」
と説明すると、西原は右下がりのグラフを書き込み、縦軸の切片に4円と記入し、縦軸に1円と記入したところから、横軸に点線で平行線を引き、右下がりのグラフと交わる点から下に点線を下ろし、横軸の目盛りを400億とした。そのグラフを全員に見せながら、西原はいきせききるように説明を始めた。
「この右下がりのグラフはプロジェクト期間累計の電車乗車の需要曲線です。まあ、健全な常識に従って、右下がりということでよろしいですね」
と言いながら一同を見回す。語尾に有無を言わせないような雰囲気がある。
「この国は形式的には社会主義ですが・・・」
と西原が言いかけたとき、王谷が質した。
「形式的には・・・というのはどういう意味?」
「この国の官僚は誰も資本論を読んでいないし、だいたい、社会主義と資本主義の違いも分かっていない」
「じゃあ、なんで、国の名前に社会主義が入っているの?」
と白石が聞く。
「建国の当初は、初代大統領も社会主義のなんたるかは分っていただろうとは思うけど・・・だいたい、社会主義を理想として建国したんではなくて、隣国の社会主義の大国と緊張関係にならないようにという政治的配慮と、その大国から援助を引き出したいという経済的な理由で・・・」
と言いながら、西原は目をグラフに落として、話を戻した。


