歓談の輪の中に痩身のシュトゥーバが立っていた。丸山は土岐を部屋の奥に案内し、王谷と談話していた白石と西原を紹介してくれた。白石は小太りで、頭にポマードをこってりと塗りたくり、金縁眼鏡の下に薄っぺらい顎を突き出した男だった。口を開くたびに金歯がのぞいていた。けして頭を下げることのない、えらそうな男だった。西原は頭髪が五分刈りで、綿のカッター・シャツに巨躯を包んだ男だった。眉毛が太く、舌足らずな話し方をした。目線が土岐より5センチほど高いせいか、顎をすこし上げ、仏像のように半分閉じたような目で、土岐を見下げた。
「大学はどちら?」
と聞かれたので、
「二流の私立大学です」
と土岐が答えたら、西原は大学名を聞こうとはしなかった。自分が卒業した大学か他の国立大学以外には興味がないように見えた。
土岐の自己紹介と名刺交換が終わると、王谷は南田を手招きした。
「ちょっと、リビングを貸してもらえるかな」
「どうぞ」
と言いながら、南田が王谷を先導した。その後に西原と白石が続き、土岐も来るようにと丸山に目で合図された。
リビングは広い廊下を隔ててダイニングの隣にあった。ダイニングと同じくらいの広さで、部屋の中央に薄茶色のラウンドテーブルがあり、その周りをカラフルなプラスティックの椅子が六脚取り囲んでいた。南田がダイニングに戻り、残りの五人全員が腰掛けると王谷が土岐のほうを一瞥して言った。
「それでは、現在のところのプロジェクトの財務分析状況を説明してもらえるかな」
と下僕を詰問するような口調だった。ときどき、入れ歯がカチカチと噛み合う音がする。
「まだ、大雑把な計算しかしていませんが・・・」
と土岐は前置きした。
「そんなことは分かっている」
と王谷は不愉快そうに言う。土岐には、なにが不愉快なのか良く分からない。
「総費用の現在価値が現行の為替レートで約一千億円、総収入の現在価値が約四百億円、したがって、このプロジェクトの純現在価値は約六百億円の赤字です」
と土岐は、夕方、作業所で丸山に説明した内容を繰り返した。
「この国に六百億円の円借款は出せないよな」
と白石が薄い顎を突き出して薄ら笑いを浮かべて言う。
「出しても、償還できないでしょう」
と西原が黒目を左右させて何かを思案しながら言う。
「大学はどちら?」
と聞かれたので、
「二流の私立大学です」
と土岐が答えたら、西原は大学名を聞こうとはしなかった。自分が卒業した大学か他の国立大学以外には興味がないように見えた。
土岐の自己紹介と名刺交換が終わると、王谷は南田を手招きした。
「ちょっと、リビングを貸してもらえるかな」
「どうぞ」
と言いながら、南田が王谷を先導した。その後に西原と白石が続き、土岐も来るようにと丸山に目で合図された。
リビングは広い廊下を隔ててダイニングの隣にあった。ダイニングと同じくらいの広さで、部屋の中央に薄茶色のラウンドテーブルがあり、その周りをカラフルなプラスティックの椅子が六脚取り囲んでいた。南田がダイニングに戻り、残りの五人全員が腰掛けると王谷が土岐のほうを一瞥して言った。
「それでは、現在のところのプロジェクトの財務分析状況を説明してもらえるかな」
と下僕を詰問するような口調だった。ときどき、入れ歯がカチカチと噛み合う音がする。
「まだ、大雑把な計算しかしていませんが・・・」
と土岐は前置きした。
「そんなことは分かっている」
と王谷は不愉快そうに言う。土岐には、なにが不愉快なのか良く分からない。
「総費用の現在価値が現行の為替レートで約一千億円、総収入の現在価値が約四百億円、したがって、このプロジェクトの純現在価値は約六百億円の赤字です」
と土岐は、夕方、作業所で丸山に説明した内容を繰り返した。
「この国に六百億円の円借款は出せないよな」
と白石が薄い顎を突き出して薄ら笑いを浮かべて言う。
「出しても、償還できないでしょう」
と西原が黒目を左右させて何かを思案しながら言う。


