「・・・そのアンケートの条件に、どういう意味があるんだ?」
「身長と体重は、犯行日に監視カメラに映る別の男とほぼ一致していなければならない。独身者で一人住まいであれば、事前にアルバイト情報が漏れる可能性が少ない。職業は、職種にもよるが、社会的にある程度の地位があると捜査が念入りに行われる可能性がある。社会的な注目度も高くなる。正業のないことが望ましい。フリーターは最適だ。フリーターが逮捕されれば、世論は冤罪とは思わず、自業自得ととらえる。最後に喫煙歴だが、監視カメラの前で自然に静止し、画像を鮮明にさせ、うつむいて顔が映らないことが不自然でないためには、たばこに火をつけさせるのがベストだ。ご丁寧に7か所の監視カメラの前で同じ画像を記録させた。画像には時間まで記録されているから完璧な証拠になる」
「すると問題は真田に買わせたスポーツ用品だな」と宇多は眠そうな目で土岐に声をかける。
「犯人はヤンキースの野球帽、ピューマのジャージー、クロスボウを収納する袋、スポーツマスク、スポーツサングラスは同じものを事前に用意し、スポーツ用品店の販売員とネット喫茶好奇の従業員を目撃者にし、監視カメラの画像と同一人物にする必要があった」
「・・・待てよ。画像ではスポーツサングラスはかけているようにはみえないぞ」
「その通り。・・・あんたからもらった資料に、カネが足らなくて、スポーツサングラスとスポーツマスクは買えなかったと書いてあった」
「・・・いや、マスクは映っているじゃないか」
「映っているのは、普通の風邪用の白いマスク。スポーツマスクは黒くて、大きい」
「・・・それはおかしい」と宇多は首を傾ける。
「・・・犯人は真田に、アルバイト当選のメールでスポーツサングラスとスポーツマスクを着用するようにと要請しているんだろう?」