エントリーしてから一週間後に当選のメールが真田のフリーメールアドレスに届いた。それによると、御徒町のスポーツショップで野球帽、ジャージー、クロスボウ、矢、クロスボウを収納する袋、スポーツサングラス、スポーツマスクを買うように、との指示があり、メーカーとブランドの指定があった。すべてを着用し、領収書を持参すれば、代金をアンケート会場で支払い、購入した物品は、クロスボウと矢以外は自分のものになる。別途、モニター会場で日当として三万円が支払われる。真田は手持ちの金が不足していたため、スポーツサングラスとスポーツマスクは購入できなかった。
 一月十七日午前十時ごろ、モニター会場には大柄の中年女性が白いマスク、グレーのファッショングラス、白い手袋、白衣姿で玄関で待っていた。そのビルの二階の会場は幅三メートルほどの細長い部屋で、部屋の端の的に向けてクロスボウを試し打ちした。指示された商品の領収書と交換に日当三万円と物品代三万円ほどを受け取った。そのときスポーツサングラスは着用せず、マスクは手持ちの白いマスクを使用していた。試し打ちは白衣の女の携帯に電話のあったところで終了した。真田はクロスボウと矢を白衣の女に渡し、そのビルを離れ、浅草の老舗のてんぷら屋で昼食をとり、スカイツリーラインでスカイツリー駅でおり、夜まで東京ソラマチで時間をつぶした。上野の好奇に戻ってきたのは午後十一時過ぎだった。
 警察はまず、遺体に突き刺さっていた矢から凶器がクロスボウであることを特定した。つぎに、スポーツセンターの監視カメラから死亡推定時刻の直前にとらえられた野球帽、ジャージー、肩から袋を下げた男の画像を確認した。それから、言問橋西詰近くのガソリンスタンドの画像を見つけ出し、男の足跡を江戸通り沿いに逆追尾し、浅草駅、上野駅にたどりついた。そこで防犯カメラの画像が途切れた。