「あのっ、今度お礼させてください!」


真冬の駅のホームで、私よりも10㎝くらい身長の低い男の子が、顔を赤らめながら言ってくる姿はとてもかわいい。顔も整っていて、自分と住む世界が違う人だと思い知らされる。それなのに、私に話しかけてきて、ましてやお誘いしてくれるなんて夢のようだ。でも私は、

「えっ、あのっ……そのぉ」

発する言葉全てが言葉になっていない。情けない状況になっているのには理由がある。唐突ではあるが、私は人のオーラや生霊・幽霊の類が見える。この事からお分かりいただけるだろう。そう、こんな可愛い系男子からは想像できない程のえげつない幽霊が後ろに蔓延っているのだ。

その数、10体。

私は生まれてきてから今まで、こんなに憑かれている人を見るのは初めてだった。涙が出そうになるのをグッと堪える。私は何を隠そう、こういうのが見えるくせに、大嫌いだ。

「ダメ……ですか?」
「いえ! ――あ、はい、いいい、です」
「良かった。じゃあ、連絡先、交換しましょう! あ、それとこれ、僕の名刺です」
「え?」

 頭が混乱するうちに、男の子はテキパキと連絡先を交換し終えて行ってしまった。私は学校に遅刻しそうになっているのにしばらく駅のホームに佇んでしまった。