財布から1000円を出して、払う。先生がニヤリとする。
「こっちはおまけだから。どんな本でも、楽しく読んだらいいよ。」
 今月のコミックを入れてくれる。
「さよなら。」
 僕は、こうしてスッキリしたような気持ちで帰った。

 月曜日、僕は登校してくるや否や先生に呼ばれた。
「天沢くん、昨日の日直の仕事忘れているみたいだね。」
 はっと気づいた。てっきり忘れていた。
「金魚の水槽の水を出しといてね。次は忘れないように。」
「はい、ごめんなさい。」
 僕は水槽の水を水道に捨てて汲み置き水に替える。昨日の湯川秀樹の本のことを少し考えていた。戦争だの、開拓だの、全くわからなかった。
「あ、あの。」
「わああ。びっくりした。」