二週間ほど前に来た時と変わらず、蔵書がたくさんある。なんというか、平川先生の唯一の弟子とも言っていいかわからない僕が唯一見る権利が与えられたのだろう。僕が今年の新学期、先生に科学を教えて下さいと頼んだときにここを教えてくれた。
「何を見ても構わないから。」
 僕は、湯川秀樹の旅人を手にとってみた。
 私の歩いてきた道は、普通の意味では別に険しくはなかった。
 から始まる。
「これ、面白いよ。」
 平川先生が来る。
「湯川の研究の過去のことや勉強について書いているんだけど、四年生にはまだねえ。」
 先生が少し険しい顔をする。勧めないのはわかっていた。しかし、
「あの、これください。」
「はい、お金は1000円。」