【筆者あとがき 作者:ツータス・パンシュ 翻訳:犬飼 純】

絵本作家として活動する前は、大学で宇宙物理学の講師をしていた。
どのテキストも専門用語の羅列、固い文章ばかりで響くものがなく、講義用に自分でまとめようと思ったことが本作のはじまりである。
少しでもわかりやすくしたつもりが、出版が決まってからは随分と修正を迫られた。
なかでも、『わかっている事実だけを記載する』という出版社の趣旨に外れ、本編に入れることができなかった『星の伝説』については未だに悔いが残る。
月や星、宇宙に関する伝説は昔から人を介し受け継がれていた、いわば歴史である。

忘れもしないあれは1966年、私が8歳の頃の話だ。天文学者である父は『流星群を見に行くぞ』とキャンピングカーに私を乗せ、遠くはアリゾナ州まで何日もかけて旅をした。スクールを休みたくなかった私は、帰りたくて何度も泣いて訴えた。そんな私に父は、人差し指を口に当てこう言った。
『流星群は、奇跡を運んでくるんだよ』と。
出版社の意向により以後の詳細は省くが、父の目指した場所で私は15万個もの流星群を見た。それは流星雨や流星嵐とも語り継がれるほどの数で、見られたのはアリゾナでもほんの一部の地域だったそうだ。

そして私は、あの日、たしかに奇跡を体験したのだ。

次回の大流星群は、この本が出版されてから二十年後の夏。日本のNAGANOという地域で見られるそうだ。
その頃、私はおじいちゃんになっているだろうが、もう一度あの奇跡を体験できるのなら、現地に赴きたいと思っている。
信じる人にだけしか、奇跡は訪れない。
私が体験した奇跡を、いつか誰かに聞いてもらえる日まで、私は果てしない空を見続けるだろう。

最後に、この本を手に取った皆さんに御礼申し上げたい。
少しでも皆さんが宇宙について詳しくなりますように。
そして流星群の奇跡があなたにも訪れますように。