そこへ栞がオハヨーって手をふりながら現れた。
西野栞(にしのしおり)は1年の時から仲のいい、私の友達。

「ねえねえ、昨日すみれが男子の体操服着て電車乗ってたって話ホント??」
開口一番、またまた興味津々で聞かれる。

私は「ああっ」と頭を抱えた。
恐ろしいほどの間の悪さ。もうダメだ、今度こそ。
完全に顔色をなくして狼狽える私に栞が首をかしげる。

「なに? どしたの?」

仕方ないからできるかぎり簡潔に事情を説明した。ズブ濡れになったところを加瀬くんに助けてもらったのだ、と。