なのに私はその気持ちを彼にひた隠しにしている。
私が『好き』って言えば、その瞬間に互いの恋が実ってしまうからだ。
そうなれば、次は当然「つきあおう」って流れになっちゃうわけでーーー

胸の奥がもやもやと悲しくなってきて、私は逃げるように日誌に視線を落とすと手元のシャーペンをぎゅっと握りなおした。

私は男の子とつきあえない。
チョットーーー個人的な事情があって。

だからこのまま、私は『友達』として彼のそばにいたいのだ。
つかず離れずの今の関係を維持したまんま。

なんて考えてるうちに、まったりとした気怠い雰囲気と初夏のなまぬるーい気温にやられて、私はモノスゴイ眠気に襲われ始めた。

「ああ、ねっむ・・」

椅子の背もたれの上に腕を組んで顎をのっけると、目の前には気持ちよくスウスウいってる加瀬くんの顔がある。

ーーーそれを見ていたら、つい。ほんの出来心だった。

私は彼の頭のすぐ真下に、こっそりと自分の頭を滑り込ませた。
で、そおっと頭上の加瀬くんを仰ぎ見る。

「うっわあ、可愛い寝顔・・」

その近さにドキドキと胸が鳴った。

私はズルイ女なのだ。
加瀬くんが本当に気がついていない時だけ、細心の注意を払って彼に近づき、トキメキとシアワセを少ーしだけお裾分けしてもらうことにしている。

加瀬くんの寝顔に目を細めつつ静かに瞼を閉じると、ふわふわと心地よい眠気にまかれ、あっという間に意識が曖昧に霞んだ。
んで、その後は。
私はもうコッチの世界に戻ってくることができなかった。
すんごいマズイ位置に身を置いちゃったまま、夢の世界へ旅立ってしまったのである。

***