小宮山が自分の数プリから顔を上げてオレを見る。
「ぜんっぜんわかんない。加瀬くん、教えて」
「いーよ、どれ?」
「えーっとね・・」ってオレの数プリをのぞきこむ小宮山は、今日もやっぱりニコニコと安心しきった顔してオレのそばにいる。

くっそう。のん気なヤツめーーー

可愛いような。腹立たしいような。
ひとくちには言えない、ちりぢりとした思いが胸に広がる。

オレにはわからない。
『誘われたら断っちゃダメ』『絶対にウンて言ってつきあえ』なんてーーーそんなオソロシイ要求にどうしてああも簡単に頷いてしまえるのか。
こっそりと彼女の横顔を盗み見て、オレは小さくため息をついた。

だって。一緒に下校したり、遊びに行ったりするだけじゃない。
いかにも男が考えそうなヨロシクナイ類の『お誘い』が、もっと色々あんだろが。

その気になれば、オレはいくらでもズルが言える。
「彼女になって」とか。
「キスしたい」とか。
そーゆう『お誘い』にも、おまえはウンって言えんのか。

なーんて。実際はそんなコトできない。
そーゆうのしちゃったら、オレらはきっと一緒にいられなくなる。