そしたら私たちの話を聞いてたらしい加瀬くんがズカズカと歩いてきて、後ろからばしーんと一発冨永くんのアタマをはたいたのだ。
「うるせー! 勝手なことゆーな。オレはまだ友達やめてねえ!」
ガッコンて椅子を引いて、ドカッと座る。
冨永くんを一睨みしてから、加瀬くんはくるりと私のほうへ身体を向けた。

「・・小宮山、今日一緒に帰ろ?」

甘酸っぱい恋の雰囲気とドンヨリした不安とを同時に漂わせたような、複雑な空気をまとった加瀬くんが私を誘う。

「今日は栞とナナ部活ないんだよね。だからーーー」
「ダメ! オマエ、オレに誘われたらどーすんだった?」
「ああそっか。そだね・・えと、ウン。わかった、一緒に帰る」
坂川でした約束を思い出して頷く私に、加瀬くんの顔が嬉しそうにトロリと崩れた。
「ヨカッタ。じゃあオレと帰ろ」

そのやりとりを隣で見てた冨永くんが目を丸くした。
「なに今の!」
ポカーンてしたまま、私と加瀬くんとを交互に目で追う。
「小宮山、オマエ加瀬に弱味でも握られてんの!? 今の何かの脅し!?」

「ちげーよ、そーゆう約束なの!」
加瀬くんが口を尖らせる。
「約束う?? イミわからん」
「いんだよ、オレらのことは! ほっとけよ」
冨永くんをジロリと睨んでから「あっそうだ」って加瀬くんがグミの袋を取り出した。