週明け。月曜の朝。
教室の入り口から顔をのぞかせると、目敏くこちらに気がついた冨永くんが教室の奥からブンブンと勢いよく手をふってくる。

「小宮山あ、オハヨ!!」

彼に手をふりかえしつつ席へ向かうと、「まあ座れよ」なんて言ってわざわざ椅子まで引いてくれる。
すんごいサービス。一体どうしたって思ったら、彼の目的は例の映画の事情聴取だった。

「映画どうだった? もう行ってきたんだろ?」
「ウン。おもしろかったよ。チケット、ありがとね」
「いーのいーの。どーせオレは観ねえもん。それよかさあ・・」
冨永くんは周囲を気遣ってか、いつも元気な声をちょっとだけひそめた。
「加瀬に好きって言われた??」
「えええ、なんで・・!?」
「だってアイツ、いきなりお友達するのやめちゃったじゃん。それってつまりは、そーゆうことなんだろ? なあ、どーだった!?」

顔が広くて情報通で、噂話なんかも大好きな冨永くんにはこーゆうミーハーなところがある。
ワクワクと期待で顔を輝かせる冨永くんには悪いけど、最終的な事実だけをつまんで伝えておくことにした。

「なんにも言われてないよ」
「なんだよ、つまんねーな!」

「なあ、加瀬のことちょっとは好きなの??」
「ええっと・・」
言葉に詰まる私に、冨永くんが苦笑いを浮かべる。
「好きじゃねえかあ、やっぱり。小宮山、相変わらずだもんなあ・・」

なんにも言えない私に冨永くんが言う。
もうはっきり断ってやれば、って。
あれじゃあ加瀬が可哀想だぞ、って。