それはオレが一歩目の足を踏み出したのとほとんど同時だった。
加瀬が小宮山に腕をまわして、机越しにやんわりと抱き寄せる。
そのままふたりはごくごく自然に、ゆっくりと唇を重ねた。

「!!!」

ウソみたいな展開に慌てたオレは、バレないようにそーっとそーっと後ろへ身体をひいた。
必死で気配を消して。

こういうの見たのは初めてじゃない。
高校教師なんてやってれば、やっぱたまにこういう場面に遭遇しちゃうことがあるもんなのだ。仕方ない。

だけど、今目撃してるふたりのそれは、今までにオレが見てきたモノの中でも一番胸にくるものがあった。

ウットリ顔火照らせてる小宮山は、もうこれ以上ないってくらい幸せそうな顔をしているし・・んで、これまたえらく満足そうな顔した加瀬が小宮山を離さない。
大事そうに小宮山にキスしては、小宮山の耳元で加瀬がコソコソと何事かをささやく。嬉しそうにそれに答える小宮山に、デレデレした加瀬がまた唇を寄せるーーー時折楽しそうな忍び笑いを漏らしながら、ふたりは飽きもせずそれを繰り返した。