今よりほんの少し前。
オレはだーれもいない放課後の廊下を1組へ向かって歩いていた。
もう生徒なんか残ってないと思ってたのに2組の教室にはまだ加瀬と小宮山がいた。机を挟んで向かい合うふたりは顔をよせあって何やら楽しそうに話し込んでいる。

小宮山の手元にはオレの数プリ。
なるほど。居残りして宿題か。
静かに様子を窺ってみると、プリントやってんのはたしかに小宮山で、加瀬は教えてやってるだけのよう。

意外なほどの加瀬のボランティア精神に感心する。面倒見いいなあ、アイツ。
んでエライな、小宮山。マジメにやってんじゃねえか。

ふたりを見守りながら、オレはひとり満足気に頷いた。

だけど、ただの友達にしちゃえらく距離が近いような気もした。
アイツらチョット仲よすぎねえ?って。

そう感じた時点でやめとけばよかったのに、小宮山の出来具合をみてやろうかな、なんて思ってしまったオレは、2組に向かってウッカリ歩を進めてしまったのだ。

そして、オレはすぐにそれを後悔することになる。
オレの目の前で、ふたりが唇を重ねてしまったから。