廊下の向こう側から、こっちへ向かって歩いてくるゴツイ男は2組の担任藤代先生だ。
「先生、どちらまで?」
「2組です」
「そうですかあ・・2組っすか・・」
くるりと向きをかえてオレは藤代先生の隣に並んだ。
「いやあ、しまった。1組にワスレモノしてきちゃったナ。ハハハ・・」

「それならワシ、ついでに取ってきましょうか? 何忘れたの、小野先生」
見た目に似合わぬ人の良さ。
オレが職員室に帰る途中と読んで、藤代先生が親切な提案をしてくれる。

が、しかし。

「いえいえ、私も戻ります。ささ、ご一緒に・・」

誰もいない放課後の静かな廊下を、オッサンふたりが並んで歩く。
その道々、オレは不自然なくらいに声を張って世間話をした。
2組に残ってるあのふたりにもよく聞こえるように。

さすがにもう気がついただろうか。
ちゃんと離れたかな、アイツら・・