オレと莉緒ちゃんとじゃこうはいかない。何もかもが違う。
オレは莉緒ちゃんにあんなふうにみつめてもらったことなんて一度もないのだ。

「なあ、オマエ、ウチのクラスの柏木莉緒とつきあってんだろ? なんで彼女いないって言ったんだよ。まさかもう別れた?」
隣を歩く小野先生がヒソヒソと話しかけてくる。

さっき寿司食ってる時に兄ちゃんに聞かれたのだ。彼女できたかって。
だけどオレは、それにウンて言うことができなかった。

「別れてはねえけど・・たぶんオレらもうダメだよ」
「ふうん。そっか」

オレらのはきっと恋じゃない。

『大好きな女の子に、あんなふうに想ってもらえたら』

中3の、あの夏の日の気持ちが蘇る。
オレもいつか兄ちゃんみたいな恋がしてみたい。

その数日後、オレは莉緒ちゃんにフられた。
理由はあえて聞かなかった。
ちょっと気まずくはあったけど、ちっとも悲しくなかった。

やっぱりオレはまだ恋を知らない。