雨の上がった数時間後。
帰っていく小宮山さんの様子を、オレは2階の窓から懲りずに観察していた。
んで、見ちゃったのだ。
嬉しそうに兄ちゃんをみつめる、小宮山さんの溶けそうな顔を。

ビックリした。
女の子って好きな男の前じゃあんな顔すんのか、って。

恋してんのが丸わかり。気持ちダダ漏れの小宮山さんの顔には、デカデカと『大好き』って書いてあった。さっきの兄ちゃんもたいがいだったけど、小宮山さんも負けず劣らず兄ちゃんのことが好きらしい。

スゲーなあ。
絵に描いたような両想い。
兄ちゃん、ヨカッタね。すっげーお似合い。

んで、いいなあ、って思った。
オレも大好きな女の子に、あんなふうに想ってもらえたら。

オレはため息つきながら眼下のふたりを覗き見ていた。
バスケばっかでまだ恋を知らない中3のオレは、あの日はじめて恋ってものに憧れを抱いたのだった。