オレが初めてナマの小宮山さんを見たのは中3の夏休みだった。

2年前の夏。
しとしとと雨のふる日曜日に、小宮山さんはウチにやってきた。
自分の部屋にいたオレは、トントンと階段を上がってくる二人分の足音に耳をすませて、ワクワクと期待に胸を膨らませていた。
小宮山さんがくるってわかってから、オレはもう楽しみで楽しみで。
だってオレはまだ、兄ちゃんの彼女の顔を見たことがなかったから。

小宮山さん。
あの、いい匂いの人。

小宮山さんは、兄ちゃんと同じクラスの同級生らしい。詳しくは知らないけれど、ずーっと片想いしてた挙げ句に、ものすごく苦労して手に入れた女の子なんだって兄ちゃんが言うもんだから、オレの期待値はイヤでも跳ね上がる。

部屋のドアをうすーく開けて待ち構えていると、階段を上りきった兄ちゃんがコッチに向かって歩いてくる。で、その後ろに小宮山さん。
ここからじゃ見えねえって思ったら、もうガマンできずに顔を出していた。

「コンニチハ!」って。