楽しそうにワイワイと話をしながらも、莉緒ちゃんの表情は冴えなかった。
まあね。オレじゃ、役不足だもんね。
自慢の彼氏にはなれないわ。

んで、たぶんこの時。
オレも莉緒ちゃんも、同時にあることに気がついていた。

『バスケ部の加瀬くん』が価値を持つのは、ウチの学生を相手にしてる時だけ。その枠の外に出ちゃえば、そこではもう、単純にオレ個人の価値が測られる。

キラキラしたふたりと別れて、また、オレと莉緒ちゃんとで歩き出す。
いつのまにか離れていた手。
「もっかいつないでいい?」
って聞いてみた。

「ゴメンね、汗かいちゃったから今はやめとく・・」

莉緒ちゃんがバックの持ち手をきゅっと握りしめる。
淡いピンクに塗られた爪にくっついてる小さなパーツがキラリと光った。

「ウン。そっか」

その後、オレらが手をつなぐことはもう二度となかった。