それから後は何を言われても、バカみたいに、ただ頭を下げ続けた。

絶対、ここで承諾してもらう。
オレはどうしてもきちんと正式に小宮山が欲しい。

「お願いします。すみれさんをオレにください!」
ってシツコク繰り返して、頭を下げて拝み倒す。

本当はこのセリフ、女の子を物みたいに扱うようでオレはあんまり好きじゃない。
だけどこのオヤジさんのテリトリーから小宮山を攫っていきたい今のオレの気分には、一番しっくりと当てはまる言葉のようにも思えた。

そして、とうとう。

オヤジさんの「勝手にしろ」の一言で、オレらは小宮山家でもなんとか結婚の了承を得た形となったのだった。
とはいえ空気は最悪。お母さんも戻ってこないし、長居するような雰囲気じゃなくて、オレらは早々に小宮山家を後にした。

「ゴメンね、加瀬くん」
マンションを出たとこで、顔面蒼白の小宮山に謝られる。
「大丈夫。なんとかOKもらえたし、来てよかったわ」
「で、でも、あれーーーホントに酷かったでしょ・・」

うん。たしかに酷かった。

声を詰まらせてうつむく小宮山の手をひいて駅に向かった。
「いーのいーの。気にすんな。あーハラへった。なんか食お? オマエ何食いたい?」
「・・酸っぱいもの」
「って何があるっけ・・??」