そしたら、それまでずーっと黙ってた小宮山のお母さんが泣き出したのだ。ポロポロ涙流して。
それ見てオレは思った。
ああ、よかった。オヤジさんはこんなでも、お母さんのほうはオレらのこと喜んでくれてんだ、って。
きっとオレらのこと認めてくれる、って。
だけどーーー

「よかったね、すみれ。嘘みたいにステキな子じゃないの、アンタの彼氏」
「ウン。私にはもったいない人だってのはわかってる」

小宮山がそう言うと、お母さんはハンッって吐き捨てるように大きく息をついてから、思いっきり顔を歪めた。
んで、耳を疑うようなことを口走る。

「ねえ、なんで!? なんでアンタだけそんないい思いができるの!? ズルイじゃないの!!」

頭にガーンってタライくらったみたいなすんげえ衝撃に、オレは思わずのけぞった。
ーーー祝福じゃなかった!!
お母さん、すげー顔して小宮山のこと睨みつけてる。

「羨ましいわ。あんたも、祐介も、みんなここから出て行けて。素敵な恋もして」
「オマエ、何言ってるんだ・・!!」
オヤジさんが青筋立てて怒鳴ろうとすんだけど・・

「もうムリ、耐えられない! こんなの見てらんないわよ!!」

オヤジさんに怒鳴り返したっていうよりは、たぶん大きな独り言。
そのままお母さんは、泣きながら部屋を出ていった。