怒鳴り疲れた父がクールダウンしてきたところを見計らって、私の後ろで静かにしてた加瀬くんがひょっこり顔を出した。

「あの」

静かなリビングに加瀬くんの声が響く。
「オレがキズモノになんかしません。すみれさんと結婚させてください」
加瀬くんが大きな声でキッパリと言い放つ。

「子供産んでほしいって頼んだのも、結婚しようって言い出したのもオレです」
「はあ?」
「て、ゆーのもオレ、昔っからすみれさんがすっげえ好きでーーー」

さっきのアレのせいで『優秀なB大生加瀬くん』への特別扱いは完全に失われていた。だけど、父に露骨にバカにした顔を向けられても加瀬くんは全然気にしない。

「必死で告ってウンて言ってもらえた時は、もうオレ、泣くかと思うほど嬉しくて・・」

頬を染めて、いきなり告白を始めた加瀬くんの極太い神経に、その他3人はギョッとド肝を抜かれた。父ですら加瀬くんが漂わせる甘酸っぱさに毒気を抜かれて口をつぐんでしまう。