そっか、ホントだ。
小宮山の言う通り、これはイジメと一緒。

イジメればイジメるほど加虐心が煽られて、加害がエスカレートしていく時のあの空気。目の前のオヤジさんもそれと同じものをまとってる。
オヤジさんの撒き散らす苛立ちと不機嫌に満ち満ちたよくわかんねえ『怒り』は、この場にいるすべての者をうんざりと落ち込ませた。

ああ、気分が悪い。HPが削られる。
見えない毒が胸に染み込んでくるみたいだーーー

これが小宮山の日常か。
小さな頃からずうっと・・?

とどめとばかりにオヤジさんが小宮山を怒鳴る。
「結婚も子供もダメだ! とにかく堕ろせ!」って。ついでに「その年でもう立派なキズモノだな」って言ってオヤジさんが小宮山をハナで笑った。
そしたら途中からずーっと黙って下向いてたハズの小宮山が、やったら反抗的な態度でプイと顔を背けたのだ。
んで「いいし別に。キズモノでも」とか言っちゃう。
小宮山がムダな油注いじゃったせいで、やっと収まりかけてたオヤジさんの炎が再燃。怒涛の勢いで小宮山が反撃をくらいはじめる。

そしてこの時。オレはこの日最大の失敗をやらかす。
思わず小宮山を背中に庇っちゃったのだ。悪者から女の子を守る正義のヒーローみたいに。

「ーーー加瀬くん、これはなんのマネ?」
「あ、えっと・・ス、スミマセン」

その後、オレらはしばらく地獄を見た。

今度は小宮山の背中に庇われつつ、オレは改めて心を固めた。
オレがもらおうって。
小宮山のことちゃんと大事にできないんなら、オレがもらう。
そんでオレが小宮山の新しい家族になる。

***