何をどう返せばいいかわからなくて、オレがポカーンてしてる間に、オヤジさんが今度は小宮山のほうを向いた。

「とにかく腹の子は堕ろせ。いいな?」
「堕ろさない。2人で話して決めたことだし」

キッパリと首を横にふる小宮山に、オヤジさんがいきなり声を荒げた。
「バカなことを言うな! だいたい、おまえがちゃんとしてたらこんなことにはなってない!」
突如、オレの目の前で親娘ふたりの言い争いがはじまった。

オレの手前抑えちゃいるんだろうけど、オヤジさんの機嫌がすんごい勢いで悪くなっていく。
「おまえのせいで周りにどれだけ迷惑がかかるかわからないのか!」
「それはわかってる。悪いと思ってるよ・・」
そう言われて小さくなる小宮山にオヤジさんが次々と畳みかける。
「おまえのせいで加瀬くんはB大をやめようとしてるんだぞ!」
「ウ、ウン・・」
「加瀬くんの人生台無しにして、おまえにその責任が取れるのか!?」

オレのことばっか持ち出して、オヤジさんが小宮山を責める。
オマエのせいで、って繰り返して。
いつのまにかオレは被害者として祭り上げられていた。
なぜか娘を孕ませた男のほうが、娘の父親に庇われてる。

オレのこと持ち出されたら小宮山は何も言えなくて、彼女が下を向けば向くほど逆にオヤジさんは勢いに乗り、興奮して小宮山を攻め立てた。