加瀬くんの就職は、きりよく、来年の4月から。
だから今年度いっぱいで大学を中退することになる。

「小宮山はどーする? いつやめる?」
「考えてなかった。どうしよう・・」
おなかが大きくなってきたらさすがに通いづらくなるだろう。
一体いつまで通えるか。
「どのあたりでやめるか、ちょっと考えてみてもいい?」
「いいよ。ゆっくり考えろよ」

一旦話を切り上げた加瀬くんが、私の隣に距離を詰めて座り直した。後ろから腕をまわしてやんわりと腰を抱かれる。
「なあ、これでちゃんと結婚できる?」
「ウン、できる」

本当に、私にはもったいない旦那様だと思う。
加瀬くんに出会えた奇跡を心から感謝した。

「やっぱりスゴイよ、加瀬くんは」
「だろ? ムチャクチャ褒めてくれていーぜ。オレ、がんばったもんね」
「褒める褒める。えーっと、スゴイ! 大好き! 天才! えーっとそれからーーー」
言葉を尽くしてお礼が言いたいのに、どーにもうまくいかない。
「ゴメン。胸がイッパイすぎてなんて言ったらいいかわかんない・・」
「んじゃ、言葉でなくていいよ。ゴホービちょうだい」
加瀬くんがおデコをゴンてぶつけて、期待のこもった目でじっと私をみつめる。