そしてその週の金曜日。
バイト先に突然加瀬くんがやってきたのだ。パリッとした真新しいスーツに身を包んで。

「どしたの加瀬くん、その格好!!」
「ああコレ? そりゃ着るでしょ。仕事探してんだからさあ」
「職安とか行ってるの? いいとこありそう?」
って聞いたら加瀬くんは突然胸を張った。

「決まった!」
「ーーーん??」
「だから就職決まった」

「えええええ!?」

つい叫んじゃって、店長に睨まれる。
「チョ、チョット待って。お水持ってくるから!」
慌ててひっこんで、すぐさまお水を調達。
私はすんごい勢いで彼のテーブルに引き返した。

「どーぞ!」
「ありがと」

悠々と美味しそうに水を飲む加瀬くんの顔は晴れ晴れとしている。
「それでそれで・・決まったって、ドコに!?」
「小野製作所」
「ーーーなんか聞いたことあるな」
「ロボット作らしてもらってたとこだよ。覚えてる?」
「あ・・!」
ハッとする私をみつめて、加瀬くんが嬉しそうにうんうんって頷いた。
「今日、坂川行ってたんだ。ちゃんと決まったから早く知らせたくて、そのまま報告に来た」
そう言う加瀬くんはパアッって顔を輝かせ、心底ホッとしたような笑顔を浮かべていた。
「今日は泊まれねーんだけど、近々またこっち来るから。そん時詳しく話すな?」

慌ただしく定食を掻き込んだ加瀬くんは、あっという間に帰っていってしまった。

「ああ、もう行っちゃった・・」