「先生オネガイ! 所長さんに聞いてみて」
「あーもう、わかったよ。聞いてやるけど、あんま期待すんなよ?」
「ウン。ありがとう!」
ついに小野が折れて、口利きを約束してくれた。
就職が決まったわけじゃないけれど、いまだかつてこれほど誰かに感謝の気持ちを持ったことはない。
「先生、オレ、今日のこと一生忘れない」
「ヤメロよ。はえーよ」

それから小野はいかにも先生らしく、オレに色々アドバイスをしてくれた。
その上最後には「親に話す時はオレも呼べ。一緒に頭下げるから」なんて言い出した。

小野が時計を見る。
「兄貴、今メシかな・・」

ちょっとここで待ってろ、って言って小野は応接室を出ていった。
ひとくちしか食ってない弁当を残して。 

***