「ゴメン」ってうつむく小宮山をオレは呆然と眺めた。
なんにも言えなくなってたオレに、何を勘違いしたのか小宮山の顔が辛そうに歪む。

「大丈夫だよ。堕ろせるから心配しないで。ホントにゴメン」

そう言われてハッとなった。
なんで小宮山が謝ってんの? 謝んなきゃいけないのはオレのほう。
だってオレが孕ませた。ハタチになったばかりの小宮山を。

「まてまて、そーじゃねえ。オレの責任だろ、どー考えたって。オマエが謝んな」

よく見れば不安げな小宮山の顔は真っ青。
慌てて抱きしめて、背中さすって、それからアタマもなでてみる。手当り次第そんなことしてるうちに、ガチガチに強張ってた小宮山の身体からゆるゆると力が抜けた。

「はあ。言えたらホッとした・・」
「そーだよ、なんでスグに言わねえの!?」

その後で小宮山に妊娠検査薬ってやつを見せてもらった。
小宮山の指差す小窓にブルーの線がくっきり浮かんでる。だけどまだ確定じゃないって小宮山は言うのだ。病院に行ってないから。
ホントはちゃんと調べてからオレに言うつもりだったって。
だけどオレは、病院よりも何よりも、まず一番最初にオレに言ってほしかった。

「一緒に考えればよかっただろ? 言えよ、ちゃんと」
「ウン。ゴメン」