「なんでダメなの? オレとすんのイヤ?」

悲しそうに顔を歪めた加瀬くんが私の首筋に唇を落とす。
止める間もなく、そこに露骨で強烈なお誘いが始まった。

ぞぞぞと身体が痺れて力が抜ける。
だけど今日はダメだ。のんびり放心してなどいられない。
もう、全力で拒絶した。

「ダメダメダメ、できない!」
「なんで?」
「今日はイヤ!!」

こんなふうに抵抗すれば、加瀬くんは絶対に無理強いはしない。ゆっくり身体を離して解放してくれる。

「なあ、誰か好きなヤツでもできた? そいつと一緒にすごしたかったの?」

目の前の傷ついた顔を見て、私はもの凄い後悔に襲われた。
ああ、私ってなんでこんなにバカなんだろう・・赤ちゃんのことばかり考えて加瀬くんのこと後回しにしてた。

きっと。

こんなふうになっちゃった以上、これ以上彼に隠しておくのは、賢明じゃない。

ホントは先に病院に行きたかった。
きちんと確かめて、もっとちゃんとしてから言いたかった。だけどーーー



「あのね、妊娠したかもしれない」
「え・・?」

「赤ちゃんが、できたかも」



「ーーーーーエ???」



***