「なあ、もうメシ食った?」
「んーん。まだ」
「オレ、買ってきたんだけど一緒に食わない?」
加瀬くんがちっちゃなローテーブルの上にコンビニのお弁当と、あと何やら酒のつまみ的なものをいくつか並べる。
「ん? コレは??」
「へへへ。今日はいーもん買ってきたんだ!!」

加瀬くんが嬉しそうに袋から取り出したのは、少し汗をかきはじめたビールとチューハイの缶だった。

「お酒!?」
「小宮山ももう飲めるだろ? せっかくだから酒飲まない?」
「ーーーウ、ウン」

一難去ってまた一難。
精一杯ニッコリと笑って見せつつも、胸がバクバクと嫌な音を立てる。

ーーーああ、どうしよう・・アルコールはダメだ。間違いなく。

「で、なんでドタキャン?」
加瀬くんの探るような視線が突き刺さる。
ついさっきまで検査薬のことで頭がいっぱいだった私は、ドタキャンの言い訳を考るのをすっかり忘れていた。
とっさに何も浮かばない。

「なんで黙ってんだよ」
「あー、ウン。あのね、ええっと・・」

下へ下へと、まるで加瀬くんの視線から逃げるように頭が垂れてゆく。
だってもう、とっくにキャパオーバーなのだ。
昨夜からずっと、このとんでもない出来事を持て余してる。
頭なんか全然回んないし、気い抜いたら泣きそう。