そして今、私はトイレの中で、妊娠検査薬のスティックと、それが入ってた箱とを握りしめて放心していた。もう、かれこれ30分くらい。

陽性を示すブルーのラインがくっきり浮きあがった検査薬。
どれだけ待ってみても、ラインが消えてくれる様子はない。
「どうしよう、妊娠しちゃったかも・・」
1人きりのトイレに、震える声が響く。

しかし。なにはともあれ、まずは病院だ。
妊娠の有無をキチンと確かめなければならない。
なんせコトが重大すぎる。加瀬くんに打ち明けるにしたって、無責任なことは言えない。

今日は木曜。
明日もバイトが入ってるから、病院に行けるのは最短で土曜日だ。
んだけど明日の夜には加瀬くんがこっちに来てしまう。それで、週末はずうっとふたりきり・・

ーーーってことは、だ。
私は彼にこの件を上手に黙っとかなきゃならない。

視線を落として膝の上のスティックをじいっとみつめてみる。
これを一旦丸々忘れて、週末をたのしく?
そんなこと、私にできる・・?

ムリだ。こんな特大の秘密を抱えて、加瀬くんの前でフツーにしてられるワケがない。