中学の頃、加瀬くんは森口さんから強烈なアプローチを受けていたのだという。

「つきあってたの?」
「まさか」
うかない表情の加瀬くんが頭をプルプル横にふる。
「オレ、森口さんが苦手でさあ。スゲー逃げてて」

加瀬くんが言うには、森口さんはとにかく積極的でグイグイくるタイプ。
「そ、それはまた・・スッゴイ気が合いそうな子なのになんで苦手なの?」
「オレ、グイグイいくのは好きだけど、グイグイこられんのはキライ」
加瀬くんが顔をしかめてプイとそっぽを向く。

「うっわあ。勝手! 森口さん可哀想・・」
「ーーーチョット待て!! それを小宮山がオレに言う!?」
だらーんと椅子にもたれて顔面にお日様のひかりを浴びてた加瀬くんがガバッと身体を起こして私を睨んだ。
「オレからこんだけ逃げ回っといてよくゆーぜ。オレだってスゲー可哀想!!」
思わぬ失言にだんまりと口をつぐむ私に加瀬くんがデッカイため息をついた。

「それよかさっきはありがとう。恥ずかしかったろ? ゴメンな」
「いーのいーの。大丈夫」

だってなんとかして助けてあげたかった。
ビショビショでベッタベタ、女の敵みたいな目で見られてた加瀬くんを。