「ヤだね。オレ、絶対帰らねえ!!」
って勝手に小宮山んちのほうへ歩き出せば、小宮山がオレを引き止めようとして半泣きですがってくる。
「イヤだって!! 今はムリなの! お願いだから今日はひとりにしてよ」
「こんな空気で帰れるわけねーだろ!?」

小宮山のアパートはもう目と鼻の先。
ちょっと歩いたら、すぐついちゃう。
彼女のバッグのポケットに手をつっこんで勝手に鍵を取り上げた。
いっつもここに入れてるの知ってるから。

「ああっ、チョット・・!」

オレは小宮山を玄関に押し込むと、そのまま後ろから彼女を抱きしめた。
「なあ覚えてる? 不安がなくなる方法。アレ、またねだってよ」
って小宮山のほっぺに鼻先くっつけて滑らせる。

ウンって言ってくれると思ってた。
振り向いて、背中に腕回してもらえるって。
それ以外考えもしなかったのに・・

「ヤだ」

オレはあっさり小宮山に拒否られた。

「え!? なんで?? したくない? スキンシップ」
「今はいい」
「えーーー! 今だからこそだろ!? なんでだよ!?」
「今はそーゆうの、したくない」