「ヤだよ。なんで!?」
「なんでもだよ。今日はムリ」
オレが帰りたくないって言っても、小宮山は頑なに首を横にふる。
「すんごい取り乱しそうな気がするの。ウザイし重いし、迷惑かける。絶対」
「ウザくてもいーよ。気にしねえから!」
「ヤだ、よくない!」

「オマエんち泊めて!!」
「イヤ!!」

「ああもう・・」

本人気づいてないけど、今すでに十分メンドクサイ。

『いい子ちゃん』の小宮山は、自分の中の黒い部分をあまり人に見せたがらない。
うまい具合にオブラートに包まれてしまいこまれたそれは、普段はほとんど表に出ることがない。
だからつきあって結構たつってゆーのに、黒くてナマナマしい小宮山をオレはまだ見たことがないのだ。

んだけどまさに今、彼女のそういう部分がチラッとだけ垣間見えている。
小宮山の背後に不穏な空気がトグロを巻いている。