辛すぎて、顔は上げていられなかった。
いつか映画館で会ったあの女の子のように、もっと潔く、堂々と別れの言葉を口にできたらよかったのだが。
カッコ悪いけれど、これが私にできる精一杯だった。

んだけど、いつまでたっても返事がない。
おかしいなと思って顔を上げたら、青ざめた加瀬くんが私の目の前でぼおっと呆けていた。

え・・こんな驚く?

予想してなかったんだろうか。
向こうから切り出されたっておかしくない状況なのに。

「・・・」
「・・・」

加瀬くんが全然反応しないから、仕方なくもう一度声をかける。

「ねえ、聞いてた? 別れよう?」
「なんで!??」
顔を強張らせた加瀬くんが、睨むようにして私を見る。
「だって・・このままってわけにもいかないじゃん・・」
「なにが!?」
「この状況がだよ」

加瀬くんは眉間にシワをよせたまま固まっている。
ああ、そうか。浮気のことバレてないって思ってるんだ。きっと。

***