「いらっしゃい・・マセ」

久しぶりに会った加瀬くんは、とんでもなくご機嫌ナナメだった。
不機嫌を撒き散らしながら私めがけてズカズカ歩いてきたと思ったら、私の真ん前で立ち止まり、わざとらしく腰を折って正面から目をあわせる。

「ねえ。ご案内してください」

たまに出る、機嫌の悪い低い声。
すっごい怒ってる時に聞くやつだ。

「コ、コチラヘドーソ」

空いてる席に案内してから、お水とメニューを準備する。

「熱出たんじゃなかった?」
メニューを開きながら、ふんぞり返るようにして下から睨みつけられる。
「あ、ウン。どうだったかな・・」
「ドウダッタカナ、じゃねんだよ。オカシイだろ!?」

「と、とりあえず、ご注文は・・?」
「オススメはどれですか」
「えーと・・」

どーにかこーにか注文をとって奥へ下がると、八木先輩がイライラと私を待ち構えていた。
「なにアレ!? あの超絶態度の悪い男だれ!? 小宮山さんの知り合い?」
イヤそうに顔をしかめた八木先輩が、加瀬くんを顎でしゃくる。

「か、彼氏です」
「えーー!? アレが!?」

驚いた先輩が店内を二度見した。