『加瀬くんの部屋から例の彼女が出てくるの見ちゃったんですけど、やっぱりアウトでしょうか』
『アウトだろ』

私は震える手でLINEをとじた。
やっぱそうか。アウトか。

そりゃそうだ。セーフなわけない。
部屋から出てきたってことは、加瀬くんが彼女を部屋に入れてたってことだから。

つい数分前のことだった。
うきうきと見上げた彼の部屋から、例のふんわり女子、本間さんが現れたのは。

薄いクリーム色のヒラヒラしたワンピースを着た彼女は、遠目にも胸元がセクシーで相変わらずの可愛らしさだった。
私の立っていた位置からは加瀬くんの姿を見ることはできなかったけれど、ふたりは何か会話を交わし、その後本間さんは階段から一番近い2階の角部屋へと消えた。たぶんあそこが彼女の部屋なのだろう。

いつからそーなっちゃったのかはわからないけれど、私の知らない間にふたりはお互いの部屋を行き来する仲になっていたようだ。
アパートに向かう坂道から、私は見上げるようにしてそれを見ていたのである。

混乱する頭で、大小様々な可能性を考えて考えてーーーだけど考えすぎた挙げ句、結局なんにも考えられなくなった私は人を頼った。
こういう時だって絶対に遠慮せず、本音を言ってくれるはずの八木先輩を。

先輩からのメッセージを読んだ後も、私はスマホを握りしめたまま、まだ一歩もその場を動けずにいた。
これがアウトだとして、じゃあ、今からどうするか。

加瀬くんを問い詰める?
彼女も呼んで話し合う?

ーーー絵に描いたような修羅場じゃないか。

それをやっちゃったら、たぶんそのまま私たちは終わる。
今日が最後の、別れの日になる。