「なあ、そんなコトよりさ・・」
って加瀬くんがくるりと私の上にのっかった。
「寝れなくなった。くっついてたらマズイことになっちゃって・・ね?」
ぐいぐいと身体をよせて、今現在のコンディションを露骨におしらせしてくれる。
「えええ。チョットもう・・今日はダメ」

だけど少々ダメって言われたぐらいじゃ諦めたりしない加瀬くんが腰を据えてキスしはじめちゃう。
「スキ、小宮山。なあ、もっかい・・」って。

今夜の私は冴えていた。
暗闇に目を凝らし、完全にスイッチが入っちゃってる加瀬くんの様子をじっと観察していた私は、普段の加瀬くんのやり口に倣って交換条件をもちかけてみたのだ。

「じゃあ、もっかいの代わりにGWは加瀬くんのとこに行かせて」
「エ!?」
驚いた加瀬くんがピタリと動きを止めて硬直する。
「GWは加瀬くんちに行きたい」
「・・オレんとこはヤだな・・GWもここがいい・・」
鼻先をぐいぐいと私のほっぺにおしつけて、これ見よがしに甘えてみせる加瀬くんだったけれども。
「絶対にイヤ。加瀬くんとこに行く!!」
「えーー・・」

今回は私も粘った。
加瀬くんが何と言おうが絶対に譲る気はなかったから手段は選ばない。
正しいリクツも大人の態度もかなぐり捨てて、ただただ、拗ねて駄々こねて我儘を言い散らした。
するとなんだか加瀬くんのテンションが幸せそうに爆上がりしてゆき、その結果、今回は珍しく彼のほうが折れてくれることになったのだ。
しかもすんごく機嫌よく、だ。

「ワカッタ。じゃあGWはオレんとこにしよ」
夢中で私を抱きしめる加瀬くんの馬鹿力に咳き込みつつ、私も嬉しくて彼に必死でしがみついた。
「ホントに!? 行ってもいーの!? 加瀬くんち!」
「いーよ、来いよ。ハイ決まり!」

「ふうっ」てひとつ息をついてから、加瀬くんが私の耳元にぴったりと唇をよせた。
「んじゃ、もういい?? 続きしても」
こっくりと頷いてそれを承諾する私に、加瀬くんが甘ーい声でささやいた。
「なあ、顔見たい。電気ゼンブつけていい?」
「絶っっ対にイヤ」
「くっそう、やっぱりか!」

おかしいな。
どうしても浮気されてる気がしない。

浮かれまくった彼のキスによって口火を切った『もっかい』は、いつにも増して熱のこもった、甘く激しい『もっかい』となったのであった。