それは今から遡ること数か月前。
アパート前でばったり遭遇した本間さんと、ふたり並んでアパートの階段を上がっていた時のことだった。

彼女の部屋は2階、オレは3階。
2階と3階との分岐点で「じゃあね」って手えふって別れようとしたオレを本間さんが呼び止める。
「まって、加瀬くん」
毎度のことだが、けしてすんなりとは帰してもらえない。絶対につかまっちゃう。
嫌々振り向いたオレに彼女はにっこりと微笑んだ。

「ねえ、私、加瀬くんの彼女さんとお友達になりたいな」
「ーーーん?」
「仲良くなれそうな気がするの。今度3人でどこか遊びに行かない?」
「3人で・・!??」

オレは耳を疑った。
小宮山と本間さんが並ぶ様子を想像して背筋が寒くなる。

「あ、あのさ、オレら週末しか会えないし、会ってる時くらいはふたりきりがいーんだよ。悪いけど遠慮してもらえる・・?」
「どうして? 私、邪魔なんてしないよ?」
「いやいやいや・・なんつーか・・」

そーじゃねえ。
キミの存在そのものが大問題なのよ・・ってオレは心の中だけでツッコんだ。
が、口には出せないのでストレスは2倍。
オレは本間さんが相手だと言いたいことがはっきり言えなくなる。

悪意や下心とは無縁そうな純粋無垢なこの笑顔。
この尊く眩しい彼女の笑顔が、なぜかオレを委縮させるのだ。

キヨラカで、純粋で、図々しい本間さんが、オレはスゲー苦手。