「くそー、ちゃんと男がいんじゃねえかよ。なんなの！？」
って言いながら加瀬くんが頭にのっかってる氷のつぶを払い落とす。

彼女が凛々しかったぶん、取り残された加瀬くんは惨めだった。
頭は完全にビッショビショ。同じくらいズブ濡れの上半身はオレンジ色に染まり、足元には大きな水たまりができている。
この状況じゃどうしたって、女の恨みを買って仕返しされたクズにしか見えない。

四方から注がれる冷たい視線の中、加瀬くんが恐る恐る私のほうを向いた。
「小宮山、あのさ・・」
何か言おうとして顔を上げた加瀬くんは、たぶんそこでやっと周囲の異様な視線に気がついた。

開きかけてた口を閉じて、
「ゴメンね」
ってつぶやく。すっごい情けない顔をして。