そしたら突然、黙りこくってた小宮山が口を開いたのだ。
「ねえ、どうして加瀬くんとこ行かせてくれないの?」って。

ふいにそう聞かれて、ドキリと胸が鳴った。

「・・オレがこっちに来たいから」
「なんで?」
「ここで会うほうが好き」
「私もたまには行きたいよ。加瀬くんとこじゃダメなの?」

「ダメ」

だって本間さんがいる。

本間さんのことは絶対に知られたくなかった。
小宮山が気にするのはわかりきってるからだ。

オレにつきあってる子がいるってわかってても、なんでか平気でオレに近づいてくる女の子、本間さん。おまけに彼女はオレのアパートのいっこ下の階に住んでる。

それでも小宮山が来てる時は、さすがの本間さんも大人しかった。
すれ違っても挨拶するくらいだったから、小宮山にさえ害がなきゃ、まあいいかって思ってたんだけど。

なのに、ある日突然、本間さんがとんでもないことを言い出したのだ。