「オレさあ、彼女との電話10分で終われたことないんだよね。絶対長くなるから本っっ当に待たなくていいよ」
「私は大丈夫。どんなに長くても待ってる」
「いやいやいや・・」
みたいな押し問答をしばらく繰り返した挙句ーーー

「残念だけど、仕方ないね」

やっと諦めてくれて、本間さんは柔らかな微笑みを湛えたまま帰っていった。

あー、ビックリした。
チョットしゃべっただけなのに、スゲー疲れる。
んでまた、あの『ふんわり』が余計コワイ。

あんなにおっとりして見えるくせに、本間さんは異常にオシが強いのだ。
まあでも、オレだって人のことは言えない。今みたいなの小宮山相手に普通にやってた。

だけど、だ。

オレ、自分はやるくせに、やられんのは好きじゃない。
ゴリゴリこられると逃げたくなるのは昔からだ。

遠ざかる本間さんの後ろ姿を眺めながら、思わず考えちゃう。
あんなのに捕まったら、絶対尻にしかれる。間違いない。

思わずぶるると首をふった。
オレは誰かの尻に敷かれるよりも、小宮山を尻に敷いてたい。

ハッと思い出して小宮山に電話をかけた。
『なあ、何してた?』
『オフロ入ろうかなって思ってた』
いつも通りの小宮山だった。
ちょっと話してから電話を切る。

あーよかった、大丈夫、って思った。この時は。

***