加瀬くんが頭からかぶったのは、たぶんオレンジジュース。
可愛らしいショートボブの女の子が、加瀬くんの頭の上で紙コップを逆さまにひっくり返していた。
「も、森口さん!?」
加瀬くんが彼女を見て顔をひきつらせる。
「こんなところで何してんの!?」
「映画に来たの」
「あっそう。てかコレーーー!! なにしてくれちゃってんの!? 信じらんねえ・・」
オレンジ色の雫を滴らせて呆然とする加瀬くんをよそに、なぜか『森口さん』は清々しい笑顔を彼に向けたのだ。
「あースカッとした。じゃあね、加瀬くん。今度こそバイバイ」
この場にそぐわない落ち着きはらった穏やかな口調と、静かな微笑み。
少し寂しそうな目をした彼女は加瀬くんにキッパリと別れの言葉を告げ、近くでポカンと立ち尽くしていた男の子を連れて颯爽と歩き去った。
初めて見る女の子だった。別の高校の子かもしれない。
彼女の正体はわからない。加瀬くんとの関係だって謎。
たった彼女が今やらかしたコトだってけして褒められたものじゃない・・・・のだけれども。
しゃんと伸びた後姿はやたらとカッコよく、その佇まいはまるで潔い武士のよう。
どこかから「わああ」なんて感嘆の声まで漏れてくる。
なんでこんなことになっちゃてんのか騒動の真相は誰にもわからなかったが、おそらくそんなことは誰も気にしていない。
ぶっちゃけ彼女は素敵だった。
去ってゆく彼女の背中は騒動を目撃したギャラリーの視線をおおいに釘付けにした。
可愛らしいショートボブの女の子が、加瀬くんの頭の上で紙コップを逆さまにひっくり返していた。
「も、森口さん!?」
加瀬くんが彼女を見て顔をひきつらせる。
「こんなところで何してんの!?」
「映画に来たの」
「あっそう。てかコレーーー!! なにしてくれちゃってんの!? 信じらんねえ・・」
オレンジ色の雫を滴らせて呆然とする加瀬くんをよそに、なぜか『森口さん』は清々しい笑顔を彼に向けたのだ。
「あースカッとした。じゃあね、加瀬くん。今度こそバイバイ」
この場にそぐわない落ち着きはらった穏やかな口調と、静かな微笑み。
少し寂しそうな目をした彼女は加瀬くんにキッパリと別れの言葉を告げ、近くでポカンと立ち尽くしていた男の子を連れて颯爽と歩き去った。
初めて見る女の子だった。別の高校の子かもしれない。
彼女の正体はわからない。加瀬くんとの関係だって謎。
たった彼女が今やらかしたコトだってけして褒められたものじゃない・・・・のだけれども。
しゃんと伸びた後姿はやたらとカッコよく、その佇まいはまるで潔い武士のよう。
どこかから「わああ」なんて感嘆の声まで漏れてくる。
なんでこんなことになっちゃてんのか騒動の真相は誰にもわからなかったが、おそらくそんなことは誰も気にしていない。
ぶっちゃけ彼女は素敵だった。
去ってゆく彼女の背中は騒動を目撃したギャラリーの視線をおおいに釘付けにした。