おっと話が逸れた、って先輩が加瀬くんの件を思い出した。

「あんたさあ、そんな悠長にイジケてて大丈夫? ボーッとしてたらB大生狙いのスゲー美人に彼氏もってかれんじゃねーの?」
「エ!?」
「小宮山さん、肉食女子と張り合って勝つ自信ある?」
「・・ナ、ナイです、全然」

途端に不安になった。
やっぱ「行かないで」って言えばよかった・・!

21時すぎ。バイトを終えて、今更だけど加瀬くんに電話してみる。
しばらくコールした後に、加瀬くんが電話をとった。

『どした?』

加瀬くんの声と一緒に耳に流れ込む飲食店特有の騒音。
やっぱり今日も、電話口から男子が大騒ぎする声が聞こえてくる。それから楽しそうな女の子の声も。

『えっと・・』

加瀬くんもこの輪の中にいるのか・・って思うと、みるみる気持ちが萎んでく。

『ゴメン。LINEしようとして間違えちゃった』
『そーなの?』
『ウン。また連絡する。じゃあね』

通話を切ったとたん、しーんと静か。
音のギャップに、また、胸をやられる。

「はーあ」

デッカイため息が静かすぎる夜道に響いた。

***