駅の上、最上階の5階にある映画館は、入ってみると週末のわりにそれほど混んでいなかった。
上映までにはまだ少し時間があったから、私たちは館内のベンチでヒマをつぶすことにした。ベンチに座ってすぐ加瀬くんが眺めはじめたのは、私たちが今から観ようとしているラブコメ映画のチラシだ。
「加瀬くん、ラブコメとか観んだね。ふふふ」
ポップでラブリーなチラシを指さして笑う私に加瀬くんが口をとがらせる。
「オマエさあ。オレがホントにこーゆうの好きだと思う!?」
「思わないし、似合わない」
だから意外なんじゃないかって笑う私にムッとしながらも、加瀬くんはマジメで真剣な顔をこちらへ向けてきた。
「映画なんかなんだっていんだよ。オレは小宮山とでかけたかっただけ」
「そ、そう・・」
加瀬くんが私の膝の上にチラシをホイとのっける。
「これってデートだよな?」
「エ!?」
「デートって思ってもいいよね?」
じりじりとにじりよってくる加瀬くんは『お友達』としての健全な境界線を堂々とオーバー。いつにもまして距離が近い。
「や、やっぱこれ・・デートなの・・?」
狼狽える私に加瀬くんがキッパリと言い放った。
「普通に考えたらそーだろ? 違うの?」
「オレはそのつもりだった」ってトロリと表情を崩した加瀬くんが、カチコチに固まる私の手をきゅっと握って耳元で「小宮山あ」ってささやいた。
「なあ、こっち向いてよ。オレさ・・」
加瀬くんが何か言おうとして口をひらいたその時。
私は不思議な光景を目にする。
私の目の前で、いきなり加瀬くんがズブ濡れたのだ。
上映までにはまだ少し時間があったから、私たちは館内のベンチでヒマをつぶすことにした。ベンチに座ってすぐ加瀬くんが眺めはじめたのは、私たちが今から観ようとしているラブコメ映画のチラシだ。
「加瀬くん、ラブコメとか観んだね。ふふふ」
ポップでラブリーなチラシを指さして笑う私に加瀬くんが口をとがらせる。
「オマエさあ。オレがホントにこーゆうの好きだと思う!?」
「思わないし、似合わない」
だから意外なんじゃないかって笑う私にムッとしながらも、加瀬くんはマジメで真剣な顔をこちらへ向けてきた。
「映画なんかなんだっていんだよ。オレは小宮山とでかけたかっただけ」
「そ、そう・・」
加瀬くんが私の膝の上にチラシをホイとのっける。
「これってデートだよな?」
「エ!?」
「デートって思ってもいいよね?」
じりじりとにじりよってくる加瀬くんは『お友達』としての健全な境界線を堂々とオーバー。いつにもまして距離が近い。
「や、やっぱこれ・・デートなの・・?」
狼狽える私に加瀬くんがキッパリと言い放った。
「普通に考えたらそーだろ? 違うの?」
「オレはそのつもりだった」ってトロリと表情を崩した加瀬くんが、カチコチに固まる私の手をきゅっと握って耳元で「小宮山あ」ってささやいた。
「なあ、こっち向いてよ。オレさ・・」
加瀬くんが何か言おうとして口をひらいたその時。
私は不思議な光景を目にする。
私の目の前で、いきなり加瀬くんがズブ濡れたのだ。