ああ、どうしよう。
この調子でガンガン近づいてこられたらーーー

好きって言ってほしくない。
告白を断っちゃったらきっと避けられる。
自分をフった女と仲良くできる男なんているわけがないんだから。

こんなにずーっとゴリゴリそばにいられといて、いきなりフッと姿を消される事態を想像してみて寒気がした。

や、やだ、絶対。
お願い、いなくならないで。

坂川駅のホームに下りると、前のほうの車両に乗ってたらしい加瀬くんが手をふりながらやってくる。「小宮山あ〜」って。
だらしなーく緩んだ笑顔と浮かれた足取りーーーなんなの、あのアホみたいな気楽さは。
くっそう。悩みがないって無敵だな!
その温度差に泣きそうになる。

「どした? 具合悪そう。酔った?」
「んなわけない。電車だよ?」

だあって、なんだか調子が悪そうに見えたからーーーなんて言って加瀬くんが私の頬に手を伸ばす。指先が触れた途端、そこにカッて熱が集まった。
「あ。顔色よくなった」
「こっ、こういうのヤメテ」
嬉しそうにほっぺを撫でまわす図々しい手をポイと放って、私は固く決心した。

今日で最後にしよう。

遊びにいくのも、公園でおやつ食べるのも、もうやめる。
加瀬くんが近づいてくるぶん、私が距離を取らないと。
でないと私たち、友達でいられなくなっちゃう。